線形計画法に基づく予測ガバナの実用的設計

背景

追従制御とは,システムの出力を目標値に追従させる制御のことである.

本研究では,目標値として予測誤差を含む予測値が用いられる場合を考える.予測値で駆動されるシステムの出力は,予測誤差がない真の目標値(真値)が利用できる場合の出力と異なる振る舞いをする.予測誤差が大きいほど,それにともない制御性能が劣化してしまう.この問題を解決するために,従来では,カルマンフィルタや機械学習などを利用して,予測値をできるだけ真値に近づける予測器の研究がされてきた.しかし,予測値を真値に一致させることは困難である.
これに対して,本研究では,予測器はなんらかの方法により与えられたものとして,整形器で予測値を整形するというアプローチをとる.予測値を整形することでシステムの出力を,真値が利用できる場合の理想的な出力に近づけることを考える.整形器として,最適予測ガバナと呼ばれる技術が提案されている.最適予測ガバナは,システムのモデル情報と過去の真値を利用して予測値を整形し,システムの出力を真値が利用できる場合の理想的な出力に最良近似させることができる.一方で,実在する多くのシステムは入力制約があるシステムや非最小位相系であるが,最適予測ガバナはこれらに適用できない場合がある.つまり,最適予測ガバナは適用できるシステムが限定的であり,実用的とはいえない.

目的

本研究の目的は,入力制約があるシステムや非最小位相系に適用できる実用的な予測ガバナの設計である.

提案手法

誤差システムを考え,予測値を整形した場合のシステムの出力と,真値が利用できる場合のシステムの出力の出力差を考える.また,予測ガバナの入出力ゲインを導入する.そして,ゲイン制約と予測ガバナの安定性を同時に考慮しつつ,出力差の最大値を最小化する予測ガバナの最適設計問題を定式化する.さらに,最適設計問題を線形計画問題に帰着させ,線形計画問題を解いて予測ガバナを設計する方法を提案した.

成果

本研究の成果は,まず,ゲイン制約付きの最適設計問題を定式化した.また,線形計画法に基づく予測ガバナの設計方法を提案した.これにより,提案法で設計した予測ガバナは,入力制約があるシステムや非最小位相系,入出力の数が異なるシステムに適用可能となった.さらに,ボール&ビームシステムを利用して,予測ガバナの実用性を実機で確認した.