信号損失を考慮した
ゲイン切り替え型状態推定と安定化制御

背景と目的

近年のICTの普及により,信号の通信路に共有ネットワークを用いて制御系を構成するネットワーク化制御系の研究が盛んに行われている.ネットワーク化制御系は導入維持のコストが低い利点がある一方,不規則にデータが欠落するパケットロスが発生する問題がある.パケットロスによる信号の損失は制御系の性能の劣化や不安定化を引き起こす場合がある.したがって,信号損失にロバストな制御系の設計手法が必要となる.

本研究では,有限長の信号損失に対して有効な次の二つの手法を採用する.

  1. 切り替え型ゲイン
  2. Round-Robnin Scheduling

切り替え型ゲインは,信号損失の発生からの経過時間に応じてゲインの切り替えを行うものである.これは単一ゲインの拡張となるため,設計の保守性の改善が期待される.Round-Robin Schedulingは,複数の機器と一つずつ循環する順番で通信を行う通信プロトコルである.ネットワークの輻輳を回避し,パケットロスの発生を抑えられることが期待される.

以上二つの手法に対応したオブザーバベース安定化制御器の設計法を確立する.

成果

本研究で得られた成果を以下に示す.

  1. 不規則な信号損失に対してロバストなオブザーバベース安定化制御器の設計
  2. オブザーバゲイン設計のためのLMI(線形行列不等式)を切り替えLyapunov関数が存在するための必要十分条件で導出

本研究では,まず観測信号に損失が発生する場合のゲイン切り替え型の状態オブザーバをLMIにより設計した.このとき,LMIを切り替えLyapunov関数が存在するための必要十分条件で導出し,設計の保守性を改善した.さらに,入力信号に損失が発生する場合に,オブザーバの推定値を利用したフィードバック制御器をLMIにより設計した.

以下に提案する制御器によるシミュレーション結果を示す.
以下の図は,シミュレーションにおける各時刻のパケットロスの連続発生回数を表したものである.

このような不規則な信号損失に対し,以下の図に示す通り状態と推定値の安定化を達成できた.

さらに,ドローンの実機を用いた提案法の検証を行った.以下の動画に示す通り,信号損失が発生する状況でも目標点へ収束させることに成功した.